アート

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26 燃える柴 「モーセの生涯〈2〉」|キリスト教美術をたのしむ 金沢百枝
【図6】 ニコラ・フラマン 《燃える柴の祭壇画》 1476年 エクス=アン=プロヴァンス サン・ソヴール大聖堂蔵
【図6】 ニコラ・フラマン 《燃える柴の祭壇画》 1476年 エクス=アン=プロヴァンス サン・ソヴール大聖堂蔵

 「燃えつづける柴」は、ユダヤ人にとっては「イスラエルの民の永続性」を示し、キリスト教では迫害の炎にも燃え尽きない「教会の永遠性」や、子を産んでも損なわれない「聖母マリアの処女性」の象徴です。15世紀南仏で活躍した画家ニコラ・フラマンの板絵では、聖母マリアが中心に描かれ、旧約聖書の物語がキリスト教の文脈に置き換えられています【図6】。画面右下がモーセ。聖なる神を直視できないと顔を覆いながら、靴を脱いでいます。

【図7】 「燃える柴」 「ファラオを説得するモーセとアロン」 『サラエボ・ハガダー』 バルセロナ 1350年頃 ボスニア・ヘルツェゴビナ国立図書館蔵
【図7】 「燃える柴」 「ファラオを説得するモーセとアロン」 『サラエボ・ハガダー』 バルセロナ 1350年頃 ボスニア・ヘルツェゴビナ国立図書館蔵

 結局、モーセは妻子とともにエジプトへ戻り、兄アロンとともに、イスラエルの民に自由を与えるようファラオの説得を試みます。【図7】はユダヤ教写本の一葉で、上段が「燃える柴」。羊飼いのモーセは目を隠していますが、ユダヤ教写本なので神は描かれず、燃える木の向こうから強い光が輝いているようです。下段はファラオを説得する場面。アロンが杖を蛇に変える奇跡を見せると、ファラオに仕える魔術師たちも杖を蛇に変えます。すると、モーセの杖(蛇)が、他の蛇をすべて呑みこむというエピソードを描いています。

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