超人気柴犬ブログ「Maru in Michigan」から飛び出した、「ことばはいらない ~Maru in Michigan~」の写真集が刊行!! それを記念して、現在ミシガン在住の著者・ジョンソン祥子さんにお話を聞きました。柴犬マルちゃんと一茶君、あんなに愛らしい写真ばかりのその理由は……? 撮影の際の裏話や、写真集刊行にあたってのジョンソンさんの思いなど、盛りだくさんの内容です。
写真集未収録のスペシャルカットも掲載。「Maru in Michigan」ファン必見です!!
その日の8割いやなことがあっても、ブログにはよかった1割とか2割を書きたい
――本をはじめて出すにあたってのご感想を教えてください。
ジョンソンさん:ブログ(「Maru in Michigan」)をはじめたとき、いつか本を出したいなと思っていました。最初は自分のために書きはじめたんですが、ランキングなどもあるし、見ている人のためだけに書くみたいな時期もありました。でもしばらく続けていて、ブログを書くと心が落ち着くし、ルーティーンみたいになって、本とかはもういいや、と思っていたときにお話があったので、うれしかったですね。「やった―! これで有名になるぞ!!」という気持ちはなくて、こつこつやってきたことを認めてもらったのがうれしかったし、純粋にマルと一茶が皆さんの心の中に入っていけばいいなと思っています。
――今回の本の元になった、ブログ「Maru in Michigan」は、ジョンソンさんにとってどういう存在ですか?
ジョンソンさん:コスプレみたいな感じです(笑)。私を実際に知っている人に言わせると、子供とか犬とか関係ないような生活をしていたし、ものとかにまみれるのも好きだったし、なんかナチュラルすぎない? と(笑)。でも、それは本当の自分に一皮かぶせたコスプレというか。ちがう自分も楽しめて、でも自分の本当の胸の内をさらけ出せる。ブログはそんな場所です。ただ、苦しいときも全部はき出してストレスリリースする方ではなくて、そういうのはなるべく書かないようにしています。たとえばその日の8割いやなことがあっても、ブログにはよかった1割とか2割を書きたいと思っています。そうすることで、その日がよかったと思えるから。
――この5月で「Maru in Michigan」は5周年を迎えました。続けられたモチベーションを教えてください。
ジョンソンさん:モチベーションは……世の中とつながっている唯一の方法だからでしょうか。日本にいたらこんなに必要としなかったかもしれないですけど、自分を一番うまく表現できる方法で、言葉のかわりになっています。書くことで自分を表現できて、あったことを重ねていって、うしろを振り返ったときに自分を表すものになっている。そういう楽しさを1~2年くらい続けて感じました。そのためにやっています。積み上げたいと思って。書きたいと思って書くときも3割くらい、書かなきゃと思って書いているのが7割くらいなんですが。
――「書かなきゃ」と思う理由はなんですか?
ジョンソンさん:毎日書こうと思っているのは、続けるためにとても大切で、いいものを撮っていくには、プレッシャーを自分に与えることが私の場合はとても重要だからです。
毎日書こうとすると写真が必要で、ないから撮らなきゃと。いい写真があったときだけ書けばいいじゃないと思われるかもしれないのですが、いい写真ってそんなに撮れないんですね。書かなきゃいけないから、何か撮った中でいいものを探そう、となる。「ブログの写真がないからソファに座ってよ」で、意外といい写真が撮れることもある。プレッシャーを自分に与えるために、毎日書かなきゃと思っています。書けたあとが楽しい。ブログは大体仕事を終えて帰ってきて、家族が寝静まってから書くのですが、「できた! やった! 寝るか!」と。
――写真を撮るにあたって、気をつけていること、コツなどあれば教えてください。
ジョンソンさん:明るめの写真が撮れるセッティングを心がけています。常識的な、写真の学校に行って習うようなセッティングより2トーンくらいあげて、空気が透明になる感じで。露出を高めにして、さらに撮った写真をPCで編集するのですが、そこでも明るめにします。自分で見えている世界より2トーンくらい明るめにすると、気持ちの明るさが出る気がしています。ピントは、しぼりを開放するっていうんですけど、うしろがぼけるようにしています。なんの対象物でも、うしろがぼけるセッティングで撮るのが好きです。
そうすることで、表現できるものが変わると思います。たとえば「桜を撮影する」という状況のとき、しぼりの値を変えると木の花全体が写るのですが、一番綺麗な花をひとつ見つけ、そこに焦点を当てて周囲よりくっきりするよう撮ります。自分の見ている世界とはちがうんだけど、自分の印象に残ったものを表現したいというか。一茶とマルがいて、うしろにごちゃごちゃいろいろあるんだけど、私がすごくかわいいと思った二人の顔だけを入れたいと思ったとき、頭の中で見えた世界を表現するのに、そのしぼりが有効だと思っています。
おやつで釣っています(笑)
――子供と犬、ただでさえ撮影が大変だと思うのですが、目線などはどうやって合わせているのですか?
ジョンソンさん:おやつで釣っていますね(笑)。「クッキーほしい人!」と。でもおやつをもらいに来ちゃうから、「うしろに下がる!」とか言って。マルには有効な言葉がいくつかあって、「ネコだよ」「ウサギだよ」というと首をかしげるんですね。あとは「マック(義親の飼い犬)だよ」と言うとぱっとこっちを見るので、そのときを撮るなど。一茶が、マルの首をかしげている姿を見るのが好きで、笑うんです。「おかしいね」といってのぞきこんで笑うので、そのときを撮っています。
自分を受け入れてくれる受け皿は必ずある
――どんなときにどんな人に読んでほしいですか?
ジョンソンさん:もちろん、ブログのファンの方をはじめ、多くの方に読んでもらえたらうれしいですが……。たとえば、かつて飼っていた犬のことを、今でもずっと思っている人。こうしてあげればよかったなと後悔している人に、犬って自分のことを許してくれるということを伝えられるといいなと思います。遅くに帰っても「あなた、こんなに遅くなって!!」なんて言わず、「帰ってきてくれてありがとう」と自分を許してくれるのが犬。そんな犬の本当にやさしくてきれいな心を思い出してほしいです。あとは、自分を見失ったときに。たとえば友達にウソついちゃって自分がきらいになったとき、社交辞令ばっかりで世の中つかれちゃったとき、作っている自分がいやになっちゃったときなどに、自分を受け入れてくれる受け皿は必ずあって、自分のままでいいんだよ、というメッセージが伝わればいいなと思います。マルと一茶はそういうことを私に言ってくれる存在なので、そういう気持ちが写真を通して伝わったらうれしいですね。
――今回の本の中で好きな写真を教えてください。
ジョンソンさん:自分的に奇跡のショットが、これです。
一茶がマルの顔をつかんで、マルに怒られる前に写真を撮れたことが自分的に奇跡でした。さらに一茶が笑っていて。おそらくマルのひげがくすぐったかったんだと思うんですが。
――読者へのメッセージをお願いします。
ジョンソンさん:ブログは夫やほかの人たちも登場して、私の生活も描かれているのですが、本では純粋な二人の世界を描いているので、ブログとのちがいを楽しんでもらえたら。キュートな二人を見てほしいなと思います。