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  • [著者]今井舞
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豪華客船「飛鳥II」|イマイマイズム見聞録[第2回] 今井舞「新潮45」12年4月号

富裕層が好むであろう雑誌が並べられている、船内の図書館内の雑誌棚。何かこう、絶妙なチョイスだ。ちなみに新潮45はなかった。
 飛鳥IIの規模、歴史、客の7割がリピーターであること、航路の安全性、揺れない設計、幾重もある船酔い対策と、資料に頼らず、老人に解り易い語り口で話が進められる。飛行機内のツラさ、ホテルが変わる毎の荷ほどき、荷造り、移動の煩雑さ……。年寄りが海外に行く際にネックになる障害が、船旅ではゼロ。荷物の積み込み制限もないのでオシャレし放題。好きな時に好きなものを好きなだけ飲み食いし、趣味のクラスや映画や読書、スポーツやおしゃべりを自由に楽しんでいるうちに、目的地が勝手に近付いて来る。しかも世界一周コースは、一番安い部屋だと一日あたり約3万円。「銀座に出て歌舞伎観て、お食事して帝国ホテルに泊まって朝食食べたら、とても3万では済みませんよね」なんて言われて、思わず「そうだな」なんて膝打ってた。いかんいかん。完全に向こうのペース。私でさえそうなんだから、老人たちはもう恍惚の表情だ。これテレビのテレホンショッピングでやったら、申し込みの電話鳴りっ放しかもしれん。
 パプアニューギニアのラバウルを経由するコース説明では、「この場所には複雑な思いを抱く方もいらっしゃるかと思われますが……」のひと言が盛り込まれるなど、徹底して全て老人目線。これはこの後の見学会でも続いた。10人前後のグループに分かれ、主だった施設をすべて見て回るのだが、各グループ担当の説明係が、みんな若いのに老人扱いに長けているのである。見学の歩みがノロくても、一切急かさず、全員が満足するまでじっくり付き合う。途中のダジャレや感想のつぶやきなども全て拾って相手をする。この徹底した教育っぷり。人材育成に金かけてるな。儲かってんだろうな。
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