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  • [著者]今井舞
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豪華客船「飛鳥II」|イマイマイズム見聞録[第2回] 今井舞「新潮45」12年4月号



 豪華客船で世界一周。何と現実味のないフレーズであろうか。しかし世の中には、そんな絵に描いた餅みたいなことを実現できる富裕層が存在するのである。というわけで、有名な豪華客船「飛鳥II」のランチ付き船上見学・説明会へ、金持ち見学に出かけてみた。
 見学・説明会といえば、無料か、もしくは格安で集客するのが常。しかしこの見学会は、ランチ付きとはいえ一人7000円也。決して安くはない。この強気な値段設定に、本気の客しか来なくていい、という飛鳥IIのスタンスがよく見える。
 さて当日。客筋を見る為、10時半の受付開始と同時に集合場所の晴海ふ頭へ。手続きを済ませて周りを見回すと、やはり年配者ばかり。多いのは女性二人組で、あとは老夫婦がちらほら。年齢層はおおむね60~70代。若者率ゼロ。しかし、そんな絵に描いたような金持ちっぽい人はいない。受付〆切の11時を少し過ぎて集合の声がかかり、目の前の飛鳥IIまで、歩いて数分の距離をバスで移動。年寄り中心の一日のスタートだ。
 戦艦大和とほぼ同じ大きさという飛鳥IIは、間近で見るとかなりデカい。高級ホテル一棟を、そのまま横倒しにして海に浮かべたよう。「ドドーン!」という擬音が似合う佇まい。圧巻。
 入船してすぐX線による手荷物検査があるのだが、係員は皆外国人。既に気分は船旅だ。その演出のための外国人配置なのではないかと訝る担当編集さんと私をよそに、同行の老人たちは皆ウキウキ状態。ソシアルダンスを踊る男女の銅像が中央に鎮座するエントランスを抜け、金ピカの手すりのらせん階段を上り、わかりやすく高級感を演出したインテリアの中、説明会場のホールへ。
 どうやら、このランチ説明会は複数の旅行会社で開催されているようで、参加者は全部で90名ほどに膨らんでいる。家族と来ていた20代ぐらいの女のコと、同業者とおぼしき若い男性二人組以外は、見事に全員老人。ほのかな仁丹臭が充満する中、説明会が始まった。
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