アート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
25 角の生えたモーセ 「モーセの生涯〈1〉」|キリスト教美術をたのしむ 金沢百枝
【図5】 「十戒を受け取るモーセ」 『バリー・セイント・エドマンズの聖書』 1135年頃 ケンブリッジ コーパス・クリスティ・カレッジ蔵
【図5】 「十戒を受け取るモーセ」 『バリー・セイント・エドマンズの聖書』 1135年頃 ケンブリッジ コーパス・クリスティ・カレッジ蔵

 角のあるモーセが登場する最古の作例は、11世紀初めのイングランド写本『エルフリックの聖書注解挿絵』です。ラテン語訳ではなく、自国語に翻訳した聖書が使われたイングランドでは、古英語の聖書がくだんの箇所を〈gehyrned(角の生えた)〉と記したため、角のあるモーセが多く描かれました【図5】。その後は宗教劇の影響等もあって、角のあるモーセの図はヨーロッパ中で定型となりました。

【図6】 「冥府降下」 『フィッツワーリン詩篇』 イングランド 1350-70年頃 パリ国立図書館蔵
【図6】 「冥府降下」 『フィッツワーリン詩篇』 イングランド 1350-70年頃 パリ国立図書館蔵

 誤解から生じた「角」ですが、わかりやすい目印です。【図6】は14世紀半ばにイングランドで描かれた詩篇集の挿絵。磔刑後、キリストは黄泉に下り、キリスト以前に死んだ義人たちを助けます。「冥府下り」と呼ばれる場面です。顎が外れそうなほど大きく口をあけた怪獣は「地獄」を表します。地獄の扉を蹴破って、サタンに打ち勝ったキリストがまず助け出すのは、アダムとエバ。背後にモーセがいるのも、角があるので一目瞭然。

  • RSSフィード
  • メールマガジン登録
  • 離婚「プーチン」はあの「愛人」と再婚するの?|「週刊新潮」6月20日号

    話題

    離婚「プーチン」はあの「愛人」と再婚するの?|「週刊新潮」6...

  • 【書評】元祖 屁理屈おじさん――サンキュータツオ/私の名作ブックレビュー|「週刊新潮」6月13日号

    話題

    【書評】元祖 屁理屈おじさん――サンキュータツオ/私の名作ブ...

  • JR東日本も参入「クルーズトレイン」の客層|「週刊新潮」6月20日号

    話題

    JR東日本も参入「クルーズトレイン」の客層|「週刊新潮」6月...

  • 48 いただきます〈最終回〉|能登 ごはん便り 赤木明登+赤木智子

    食・暮らし

    48 いただきます〈最終回〉|能登 ごはん便り 赤木明登+赤...

  • “快挙”を見ずに逝った「電脳将棋」パイオニア|「週刊新潮」6月13日号

    話題

    “快挙”を見ずに逝った「電脳将棋」パイオニア|「週刊新潮」6...

  • 大竹まこと“セクハラ”で株を上げる「繁田美貴アナ」|「週刊新潮」6月13日号

    話題

    大竹まこと“セクハラ”で株を上げる「繁田美貴アナ」|「週刊新...

Copyright © SHINCHOSHA All Rights Reserved. すべての画像・データについて無断転用・無断転載を禁じます。