【図5】 ローマ派の画家とジョット 「料理を老いたイサクに食べさせようとするエサウ」 サン・フランチェスコ聖堂上堂身廊上部壁画 アッシジ 1290-1300年
しばらくすると、エサウが獲物を手に戻りました。美味しい料理を作って、父の枕元に運び、「起きて息子の獲物を食べてください」とすすめます。
イサクは激しく体を震わせて言った。「では、あれは、一体誰だったのだ。さっき獲物を取ってわたしのところに持って来たのは。実は、お前が来る前にわたしはみんな食べて、彼を祝福してしまった。だから、彼が祝福されたものになっている。」
エサウはこの父の言葉を聞くと、悲痛な叫びをあげて激しく泣き、父に向かって言った。「わたしのお父さん。わたしも、このわたしも祝福してください。」(「創世記」27章33節~34節)
エサウは父に叫んだ。「わたしのお父さん。祝福はたった一つしかないのですか。わたしも、このわたしも祝福してください、わたしのお父さん。」エサウは声をあげて泣いた。(創世記/27章 38節)
アッシジの壁画【図5】は、イサクが衰弱した体を「激しく震わせる」場面でしょうか。毛深くて狼男のようなエサウも悲しげです。
ここでやりとりされている「祝福(神の恵み)」は、神からイサクに与えられた分です。ヤコブに渡してしまった以上、イサクのもとに祝福はありません。撤回はできません。この後、激怒したエサウに殺されないように、ヤコブはリベカの故郷へ逃げます。そして、天の梯子を見たり、天使と相撲をとったりして、「イスラエル」(「神に勝利した者」の意)と呼ばれるようになるのです。
【おまけ】レンズ豆のスープ
エサウが長子権を譲ってまで食べたがった、レンズ豆のスープを作ってみました。赤いレンズ豆を30分ほど水に浸してから、柔らかくなるまで煮ておきます。別に、玉ねぎ、セロリ、人参、にんにくのみじん切りを炒めて、そこに鶏スープを入れ、豆とともに煮込みます。ベイリーフとクミン、コリアンダーで香りをつけました。『旧約聖書』の時代の味とは、似ても似つかないかもしれませんが、たしかに、食べずにはいられなくなるほどの良い香りがします。食べるとポカポカになりました。