【図5】 「聖ベルナルドゥスとヤコブの梯子」 『ツヴィーファルテンの祈祷書』 1138-1147年 シュトゥットガルト ヴュルテンベルク国立図書館蔵
中世の神学では「ヤコブの梯子」は、「魂が徳を得て神に近づく諸段階」を表すと解釈されました。12世紀のクレルヴォーの聖ベルナルドゥスも「ヤコブの梯子」に言及し、「慈愛」のみが梯子の頂きに達し、傲慢な者は梯子の下にいる竜に食われると記しています。12世紀ザクセンで作られた写本の一葉【図5】には、穏やかに執筆に勤しむ聖ベルナルドゥス(ちなみに、左手のナイフは羊皮紙に書く時の消しゴムのようなもの)。その左右に2本の梯子があります。どちらの梯子の頂きにもキリストがいますが、一方の梯子の下には地獄を表す竜があんぐり口を開けています。画枠からはみ出るほど大きな竜の口から、舌が炎のように舞い上がっているのに、竜の目つきは意外とおとなしい。左のヤコブの梯子のうえの天使たちは、ジャングルジムで遊ぶ幼児のように必死です。配色を抑えた線描表現に味があります。