【図3】 「ヤコブの梯子」 『サラエボ・ハガダー』 バルセロナ 1350年頃 ボスニア・ヘルツェゴビナ国立図書館蔵
神の描写を避けるユダヤ教美術では、天使の顔さえ描かない場合があります。ユダヤ教写本『サラエボ・ハガダー』【図3】の一葉の天使は、異様な姿です。頁の上段は、狩りから帰ったエサウに、イサクが「もうおまえに与える祝福はないよ」と言う場面。下段には、石を枕に眠るヤコブがいます。天の梯子を行き来するのは、顔を翼で覆われた天使たちです。梯子は雲間へ消えてゆきます。
いささか脱線しますが、この頁の余白に書き込まれた落書き(?)がたのしいのです。小鳥がテコテコ歩いているみたいな、謎の「2」の字がたくさん並びます。