夕方、天使たちがソドムに着くと、ロトが市門のところに座っていました。そして、ひれ伏して挨拶し、自邸に招きます。最初は「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします」と断った天使たちも、ロトのたっての頼みに折れて、客人となります。彼らが夕飯を終えたころ、ソドムの男たちが(老人も若者も)大勢おしかけ、家を囲んでわめきたてました。
男色家を意味する英語ソドミスト(sodomist)は、うら若き乙女には目もくれず、見目麗しい若い旅人(天使たち)に暴行をしようとしたソドムの男たちに由来します。天使たちはこの町が天罰によって亡ぶ運命にあることをロトに告げ、一刻も早く町を出るよう警告します。ロトは一族に逃げるよう伝えるのですが、冗談だと思って誰も信じません。結局、脱出を説得できたのは、嫁入り前の娘たちと妻だけでした。明け方になってようやく、ためらうロトとその家族は、天使たちに導かれて町を離れました。町外れまできたとき、神はこう言います。
朝日が昇り、一行が小さな町ツォアルに着いたとき、ソドムとゴモラに天から硫黄の火が降りそそぎ、全住民は草木もろとも焼滅しました。ロトの妻は後ろを振り返ったので、塩の柱になってしまいました。
この物語が描かれた最初期の例は、以前にも挙げた『アッシュバーナムのモーセ五書』の挿絵でしょう【図2】。炎上する二つの町(ソドムとゴモラ)から、ふたりの娘を連れて逃げるロト。山上で手をかざして、「炉の煙のように地面から煙が立ち上る」ようすを眺めるアブラハムもいます。ソドムとゴモラを焼く業火は、ゆらゆらと、画枠からはみ出して燃え上がっています。ノアの大洪水と同様に、地上の浄化をあらわす炎です。
「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れて来い。なぶりものにしてやるから。」
ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、言った。
「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」
男たちは口々に言った。
「そこをどけ。」
「こいつは、よそ者のくせに、指図などして。」
「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」
そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。
二人の客(注:天使たち)はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、戸口の前にいる男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。
(「創世記」第19章5節~11節)
男色家を意味する英語ソドミスト(sodomist)は、うら若き乙女には目もくれず、見目麗しい若い旅人(天使たち)に暴行をしようとしたソドムの男たちに由来します。天使たちはこの町が天罰によって亡ぶ運命にあることをロトに告げ、一刻も早く町を出るよう警告します。ロトは一族に逃げるよう伝えるのですが、冗談だと思って誰も信じません。結局、脱出を説得できたのは、嫁入り前の娘たちと妻だけでした。明け方になってようやく、ためらうロトとその家族は、天使たちに導かれて町を離れました。町外れまできたとき、神はこう言います。
「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」(「創世記」第19章17節)
朝日が昇り、一行が小さな町ツォアルに着いたとき、ソドムとゴモラに天から硫黄の火が降りそそぎ、全住民は草木もろとも焼滅しました。ロトの妻は後ろを振り返ったので、塩の柱になってしまいました。
【図2】 「アブラハム、ロト、アビメレク、サラ、ハガル」 『アッシュバーナムのモーセ五書』 制作地不明 6世紀末~7世紀初め パリ国立図書館蔵
この物語が描かれた最初期の例は、以前にも挙げた『アッシュバーナムのモーセ五書』の挿絵でしょう【図2】。炎上する二つの町(ソドムとゴモラ)から、ふたりの娘を連れて逃げるロト。山上で手をかざして、「炉の煙のように地面から煙が立ち上る」ようすを眺めるアブラハムもいます。ソドムとゴモラを焼く業火は、ゆらゆらと、画枠からはみ出して燃え上がっています。ノアの大洪水と同様に、地上の浄化をあらわす炎です。