「金取れる芝居を目指して!」
金を払って金をとれる芝居を目指す人々。
「今日は見学の人もいて、感想聞けるから。みんな、金取れる芝居を目指して!」と先生にハッパをかけられ、緊張の面持ちで持ち場につく生徒さん達。どうやらこれから芝居が始まるらしい。
プリントアウトしてきた講師一覧と照らし合わせると、このトトロ先生、現役でサスペンスドラマなどを撮っておられる監督さんとのこと。ふむ。ナイス副業。
そして始まった寸劇の内容といえば、スナック通いしているオッサン4人が、そのうち一人の嫁にバレ、「あんたたち、何よこの請求書は!」とつるし上げを食らうという、4コママンガみたいな話。前から練習しているらしく、一応動きとセリフは入っているのだが、いかんせん素人、しかも年配者。皆自分のセリフと動きだけをこなすのでいっぱいいっぱいで、それでも噛んだりトチったり。しかし先生は、「妻のことを怖いと思ってるのが無意識に出たセリフだから、言った後で“しまった”って顔をして」「『あら、皆さんお揃いで』は、今気付いたんじゃなく、待ってたところに現れた感じで」と、あくまで役者に対するように丁寧にアドバイス。演技指導のしかたや、「ハィッ!スターッ(ト)」「カッ(ト)!」というかけ声に「現役感」が漲っている。
同じくだりを何度も見せられたところで、「どうですかこの芝居。いくらぐらい払えます?」とトトロ監督に聞かれ「そうですね、300円……を私が頂く感じで」と、年配向けに綾小路きみまろっぽく答えて、ややウケ。素人がノリノリで芝居をやる、という非日常に放り込まれたせいで、こっちも引っ張られ、恥やてらいがとっぱらわれてる感じ。
その後も同じ芝居が延々続き、セリフもすっかり頭に入ってしまった。今やれと言われたら、やれる。……私、やれます、やらせてください月影先生!! と気分はすっかり北島マヤになっていたところへ、「お時間です」と冷や水を浴びせるように事務局の人がお迎えに。
そうなのだ。なぜか見学は、120分の授業のうち30分以内、という決まりで、授業の途中から入って途中で出る、という何とも無粋な形に。「え~、この後芝居やってくでしょ?」というトトロ先生の冗談半分の誘いを辞退しお暇したが、あのまま事務局の人が来なかったら、教室の真ん中で紅天女になってたかもしれない。……無粋万歳!