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  • [著者]今井舞
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石川遼父の講演会|イマイマイズム見聞録[第6回] 今井舞「新潮45」12年8月号
 そんな彼が、唯一「遼」を連発してたのは、命名時のエピソードを語る際。目標より更に上を目指す子になって欲しいと「はるかかなた」を指す「遼」の名をつけたそうな。それを語る時の「夢、叶ったり!」の勝ちどきの表情たるや。確かにそういう顔をする権利はあるのだが、それをそこまで行使しなくとも。
「ずっと『夢はマスターズ優勝』と言っていますが、本当に夢を実現する人は、それよりもっと上に目標を設定するものです。『マスターズ優勝』ではなく『マスターズで優勝したら何をしたいか』を掲げて初めて、優勝の可能性が出てくる。例えば『マスターズで優勝したら、子供たちにゴルフ場を開放したい』とか『被災地の人のためにゴルフ場を作りたい』とかね。そういう、更なる上を見据えた人間だけが、夢を叶えることができるのです」……ってそれ完全にお前の考えた夢だろが。息子のマスターズ優勝後のコメントまで既に用意してあるという。このメンタリティはすごいな。石川遼はいつまでこの父親に「付き合って」やるんだろう。この父親と距離を置くのが、一番「マスターズ優勝」への近道になるような気がして仕方ないが。
 2時間(!)もの講演の間、常に柔らかく微笑み話し続けていた石川遼父。しかし、その細い目の奥は、全く微笑んでいないように見えた。この「笑顔は柔和なのに、目から表情が読みとれない」って点、ちょっと小泉元首相に似てる気が。「語り好き」「自分の夢に人を巻き込む」「白髪を染めない」などなど、石川遼の父親と小泉元首相の相似性については、今後の研究課題としたい。
 わかりやすく「ひとクセあり〼」を発信し続ける石川遼父であるが、会場の客はそんなシグナルをキャッチすることもなく、終始リスペクトのまま講演は終了。皆「いい話聴いたわ~」的な充実した面持ちで帰ってゆく。……マジっすか。
 帰りしな、パンフを改めてよく見ると、「慶応丸の内シティキャンパス定例講演会『夕学五十講』」の文字が。丸ビルホールなんてハイソな場所を借りきり、通好みの人選にこだわって、ちょっと知的な空間演出して。……少子化の今、講演好きのマジメな善男善女カモにして、なんか慶応が副業に精出してやがるぞ!
 出る方だけではない、開催する方もまた、なかなかのタマ。「講演」の世界の奥深さに、襟を正して、会場を後にするのみであった。
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