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  • [著者]今井舞
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東京スカイツリーオープン当日|イマイマイズム見聞録[第5回] 今井舞「新潮45」12年7月号
 子供連れのヤングファミリーも結構いたが(学校はどうした、兄弟)、若い父親がビデオ撮りながら歩き、撮影スポットではデジカメでも撮って、今度は自分の携帯取り出して撮影、次は妻の携帯でと、ちんたらちんたら各自異様に撮影に時間がかかっている。景観ゼロでもこの始末なら、もし晴れてたらどうなってたかと思うと、ゾッとする。
 展望フロアは他にないのに、またも行列があるので何事かと見てみると、スカイツリーのキャラクター・ソラカラちゃんグッズを売る土産物屋に入るための列。会計はまた別の列。併設のカフェに入るにも列。……ご苦労さんです。

ソラカラちゃんの向こうに、スヌーピーとディズニーのぬいぐるみも。節操はどうした。


「キティ」と「限定」につられ、こんなモンにまで人だかりが。


社長より愛をこめて
 ほうほうのていで地上に戻ると、またもソラカラちゃんグッズ売り場が。もう、石を投げるとソラカラちゃんに当たるってくらい、ソラマチ内はソラカラちゃんだらけ。
 しかし、スカイツリーの敷地を一歩出ると、そこは急に「おしなりくん」の勢力下だ。商店には必ず「おしなりくんグッズあります」の手書きの張り紙があり、おしなりくん一色。だが、それが貼ってある寂れたおもちゃ屋や、よろず屋みたいなスーパーの佇まいを見るにつけ、「スカイツリーの旨味」はこっちには還元されてないな、というのがヒシヒシ伝わって来る。単純な話、ソラカラちゃん使うと、金取られるんだろう。この、ズバッと音を立てたような「内」と「外」の分断。鼻先つき合わせてるのに相容れない感じ。イスラエルとパレスチナみたい。
 スカイツリー付近の道路上には、駐車場へ車を誘導する係員が、1mおきに一人立っていた。ま、天気が良ければかなりの人が押し寄せただろうから、このくらい必要だったのかもしれないが。でも1mおきて。ソラマチ内の係員といい、スカイツリーが、ものすごい数の雇用を生み出したのは確かだと思う。だがその費用って結局、割高な展望台や水族館の入場料(ペンギンとクラゲで2000円は高い)に上乗せされているんじゃないか。そして旨味は経営母体の東武グループへ。この日展望台のチケットが取れたのも、東武系列ホテルのブッフェとセットだったからなんだろう。
 それにしても、この日一番引っかかったのは、ソラマチ内の普通のファミリーマートに、社長から胡蝶蘭が贈られていたこと。オープン記念に胡蝶蘭置いてあるコンビニって初めて見た。それくらい、ここは儲けが期待できるってことなのか。
 そんな場所でした。スカイツリーって。

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