「鳩とオリーヴ」 『サン・スヴェールのベアトゥス』 フランス 11世紀半ば パリ国立図書館蔵
地上に人が増えはじめると、人間は「悪いことばかり考えるように」なりました。それをご覧になった神さまは、人を造ったことを後悔し、大洪水を起こして世界を一新することに決めました。
「見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える」(「創世記」第6章17節)
しかし、堕落した世にたったひとり、御心にかなう人物がいました。ノアはアダムから数えて10代目。アダムの第三子セトの子孫です。「神に従う無垢な人」でした。神さまはノアに箱舟(容量の大きい方形の船)を造るよう命じ、ノアの三人の息子とその妻、そして地上のすべての動物の雄雌が、大洪水を生き延びられるよう計らいました。神の命を受けて、世界中からさまざまな動物のつがいがノアのもとへやってきます。
神さまはノアに、どんな船を造るのか、細かく指示しました。「小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。」「長さを300アンマ、幅を50アンマ、高さを30アンマ」「上から1アンマの位置に明かりとり」「3階建て」など、かなり具体的です(「創世記」第6章14節~16節)。1アンマは約45センチですから、全長135メートルもある巨大な船です。 箱舟が、聖書の記述どおり描かれていることはまずありません。『アッシュバーナムのモーセ五書』の箱舟なんて丸みを帯びていて、宇宙船のようです【図1】。
【図1】「ノアの箱船と大洪水」 『アッシュバーナムのモーセ五書』 制作地不明 6世紀末~7世紀初め パリ国立図書館蔵