「アベル殺しと、その罪を問い出されるカイン」 『リポイの聖書』 カタルーニャ 10世紀末~11世紀初め ヴァチカン図書館蔵
カインは、ほんとうに、弟アベルを殺したことが発覚しないと思っていたのでしょうか。殺害後、「お前の弟アベルはどこにいるのか」と神さまに訊かれた時、「わたしは弟の番人でしょうか」としらばっくれています。神さまは、次のような激しい言葉で、カインを呪いました。
「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」(「創世記」第4章10節~12節)
【図1】 『アッシュバーナムのモーセ五書』 制作地不明 6世紀末~7世紀初め パリ国立図書館蔵
そのときのカインの動揺を表す情景として、わたしの脳裏に焼きついているのが、【図1】です。前回も挙げた『アッシュバーナムのモーセ五書』の一部。「ひえ~っ」と、両手をあげてのけぞっています。他の作例は、もうすこしリアクションが小さい。