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アダムとエバのその後 「労働」|キリスト教美術をたのしむ 金沢百枝


洗礼盤 オール・セインツ聖堂 トゥルネイ フランドル 1150年頃
洗礼盤 オール・セインツ聖堂 トゥルネイ フランドル 1150年頃

 エデンの園を追放されたアダムとエバには、苛酷な現実が待ちかまえていました。

「主なる神は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。」(「創世記」第3章23節~24節)

 このように、「創世記」にはさらっとしか書かれていませんが、「働かざるもの食うべからず」な世界へ彼らは足を踏み入れたのです。

【図1】 「追放」『セント・オーバンズ詩篇』 イギリス 1125-50年頃 ヒルデスハイム大聖堂図書館蔵
【図1】 「追放」 『セント・オーバンズ詩篇』 イギリス 1125-50年頃 ヒルデスハイム大聖堂図書館蔵

 楽園追放の場面では、耕すための鍬をアダムが抱え、糸を紡ぐための棒をエバが抱えている姿を描くのが一般的です。糸紡ぎは女性の仕事。12世紀イングランドで制作された『セント・オーバンズ詩篇』【図1】では、創造主が2人を送り出しています。アダムは名残惜しそうに振り返っています。
 彼らがどうやって働くすべを学んだのか、その苦労話は「創世記」には記されていません。物語はすぐにアダムとエバの2人の息子、カインとアベルの殺人劇に移ってしまうからです。

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