旅・街歩き

  • [著者]東野翠れん(ひがしの・すいれん/写真家),[イラストレーション]nakaban(HP:www.nakaban.com/、)
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イサム・ノグチの滑り台 東野翠れん/私の好きなもの 暮しのヒント101




● 北海道札幌市中央区大通西8丁目 大通公園内
写真は《ブラックスライドマントラ》の絵葉書。
撮影=綿引幸造


私の好きなもの―暮しのヒント101―
岡尾美代子、高橋みどり、東野翠れん、福田里香、ほか
購入
 北海道、札幌の大通公園に真っ黒な滑り台があります。
 イサム・ノグチによる、スパイラル状になったブラックスライドマントラという滑り台です。数年前に、北海道へ訪れた何人かと、夕食後に寄ったのがであったきっかけでした。
 9月のはじめで、ちょうど夏も終わる頃でした。数段の階段を登り、あとは滑り降りるだけ。これだけのことなのに、どういう訳かやめられなくなりました。円を描くように滑り降りているうちに、だんだん裸足の方がいいのではないか、ということで裸足になってみると、真っ黒なその石がひんやり冷たくて、気持ちがよかったのです。
 翌日は、同じイサム・ノグチが設計した、モエレ沼公園へ行きました。そこで、一枚の絵ハガキが目に留まりました。前の晩に繰り返し滑ったあのブラックスライドマントラに、雪がかかっているものです。その時、ハガキは売り切れていましたが、モエレ沼公園を案内してくださった地元で暮らす方に、雪のかかったそのハガキをあとから送っていただけたのです。このハガキを眺めながら、いつか白く雪のかかったスライドを滑り降りたいと、よく思いを巡らせています。
 ブラックスライドマントラを一緒に創った石匠は、「人も滑るけど、こころも滑る」と言ったそうです。“こころも滑る”とは、ぴったりな言葉だな、と思いました。
 一本のたくましい木を見つけて、登ったり降りたり、何度でもそこへ遊びに出かけたいと思う……そんな小さい頃の喜びにも、似ていたような気がします。

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