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「東証一部」上場を果たした「ごま油」の底力|「週刊新潮」4月18日号
 ごま油、である。和洋中どんな料理にも合う、豊かな香り。今や食卓には欠かせない調味料だ。

 そんなごま油製造の老舗・かどや製油が、4月2日、東証一部に上場した。二部上場からわずか1年、“スピード出世”である。同社の小澤二郎社長は言う。

「上場は広告宣伝の価値があると思っています。株をより広く持っていただき、ファンを増やしたい」

 かどやは1858年、香川県小豆島で創業。最初はそうめん生産用のごま油を製造していた。明治以降は食用油の生産を開始し、戦時中の統制経済下では菜種油や大豆油も手がけたが、

「戦後、大手メーカーに押されて窮地に陥り、1957年、総代理店の小澤商店(現・小澤物産)が新規に会社を設立して創業家から一切を買い取った」(同)

 新生かどやは原点に帰ってごま油だけに絞る。1967年には家庭用の瓶詰めを発売して台所にごま油を定着させ、現在は国内シェアが約5割。着実に社業を伸ばしてきた。

「一部昇格の基準は厳しいのですが、中でも“株式の流動性35%以上”というのが一番きつかった」(同)

 大株主の三菱商事や三井物産に一定数の株の放出をお願いしてクリアしたとか。

「今年は新規上場銘柄のほとんどが高値で取引され、成功しています。市場が暖まったところでの一部上場は、運がいい」(株式評論家の植木靖男氏)

 が、好事魔多し。99%以上を輸入に頼るごまの価格が、円安や不作の影響で急騰。5月から1割の値上げに踏み切ることになった。

「今後は北米への輸出も拡大します。狙いは現地の中国・韓国人市場」(小澤社長)

 155年に亘って営々と作り続けてきたごま油の底力とは、これなのだ。
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