話題

  • [著者]今井舞
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
住宅見学会|イマイマイズム見聞録[第8回] 今井舞「新潮45」12年10月号
 リビングや台所などのこだわりの話が続く中、私は目の前のコルクボードに貼ってある、Aさんご子息の通っているであろう私立有名校の「記念写真」やら「お知らせ」に釘付けに。「バザー出品は手作りのもので。値札付きの新品はご遠慮ください」「オークションコーナーに、10万円を超えるものを出さないでください」だと。ワオ! ブルジョワ~ン!(←お好きな言い方で、一発ギャグ風に)
 いやもうね。でっかい土地に、家を建て替え、子供は有名私立で健やかな毎日。こんだけ揃って、さらに冬もポカポカたぁ、こちとら働くのがバカらしくならぁ。しかし「建築メーカーをどこにするか考えてる」って時点で、今日ここに参加してる人もたぶん「土地持ち」だろうから、そこに勝手に混ざって気色ばむ、間違ってるのは私ですね。
 バスに戻り、またまた飲み物タポタポ攻撃を受けながら、次の家のある初台へ。初台かあ。またいいとこだなぁ。そして着いたその家は敷地30坪の3階建て。こちらはまだ築3か月とのことで、新築の匂いが漂う。オーナーであるBさんはどう見ても30そこそこ。奥さんも若くてカワイイ。一人娘は幼稚園くらい。Bさんの両親と三世帯同居だ。持ってるぅ。
 家は、玄関が別で、台所や風呂など、生活圏がそれぞれに設えられた二世帯住宅の構えだが、中で二つの家が繋がり、行き来ができるようになっている。「相続税対策ですね」と小さく口にすると、そばにいたメーカーの人、Bさん、そして50代夫婦が同時に「……ですねッ!」と反応。家の中が完全に分かれている二世帯住宅だと、「同居」と見なされず、親の死後、家を相続する際税率が高くなる。そんな話をどっかで聞いたことがあったので、目の当たりにして思わず口をついたのだが。さすが皆さん。皆さんだけにご存じでいらっしゃる。何のこっちゃ。
 ここでも「オーナートークタイム」があったのだが、何といってもここのウリは「太陽光発電」であった。屋根一面につけられたパネル。最新の蓄電池。リビングのパソコンには、リアルタイムの発生電力が表示。電気料金の明細書まで見せてくれて「今月は2万円近く電気が売れました」。この明細書攻撃は効いたな。参加者全員膝乗り出して説明聞いてた。私も思わず前のめり。でもさ、今カンカン照りの8月だし。「毎月こうじゃないですよね?」と聞くと、シン、と一瞬空気が凍る。しまった。でも、「そうですね。毎月じゃないです」って答えだったし。今1kWh40円台で売れるらしいけど、来年は30円台になっちゃうらしいし。なんかさ、不安定じゃね?(←ロウワー風)
 とさすがにそれは口にしなかったが。だってこのメーカーは、太陽光発電システムに命かけてるのである。バスで住宅展示場に戻った後、サンドイッチにまたお茶出され、「太陽光発電搭載棟数でギネス記録達成!」とアツい説明会が。ふむ。電力が稼げるほどのパネルが張れるデカい敷地に家建てるなら、私もつけますわ。説明会終了とともに、金持ちに混ざってのブルジョワ気分も終了~。魔法が解けたシンデレラの気分で、築35年のボロマンションの自宅へと帰り、ソーラーなしの直の西日に照らされながら、この原稿を書いている。ま、私はこれで十分です。


個人宅内の写真はNGなので、その後に訪れた住宅展示場内を。炎天下のせいで日曜の午後だというのに人は誰もおらず。不気味な静けさの中、各メーカーのモデルハウスがしのぎを削る。

「以下ご参考までに」以降からが本丸って感じ。

帰り際渡された「お土産」。うーん、ザ・無難。
  • 最初のページ 前のページ
  • 123

  • RSSフィード
  • メールマガジン登録
  • “タイの呪い”は解けず「日本人ボクサー」17連敗|「週刊新潮」5月16日号

    話題

    “タイの呪い”は解けず「日本人ボクサー」17連敗|「週刊新潮...

  • 東京都・日枝神社|ゴリヤクゴリヤク!~編集部員Sが行く、幸せになる神社めぐり~

    旅・街歩き

    東京都・日枝神社|ゴリヤクゴリヤク!~編集部員Sが行く、幸せ...

  • 捕手3人目「2000安打」谷繁元信のコワモテ伝説|「週刊新潮」5月23日号

    話題

    捕手3人目「2000安打」谷繁元信のコワモテ伝説|「週刊新潮...

  • 元キャンペーンガールは美しかった! 『藤牧秀健の顔整体マッサージ 上げたい人は、下げなさい!』撮影裏話

    話題

    元キャンペーンガールは美しかった! 『藤牧秀健の顔整体マッサ...

  • 46 もぬけの殻|能登 ごはん便り 赤木明登+赤木智子

    食・暮らし

    46 もぬけの殻|能登 ごはん便り 赤木明登+赤木智子

  • 『忘れられた日本人』の世界――【書評】山村杳樹/『幸せに暮らす集落―鹿児島県土喰集落の人々と共に―』ジェフリー・S・アイリッシュ|「新潮45」2013年4月号

    話題

    『忘れられた日本人』の世界――【書評】山村杳樹/『幸せに暮ら...

Copyright © SHINCHOSHA All Rights Reserved. すべての画像・データについて無断転用・無断転載を禁じます。