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  • [著者]今井舞
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東京スカイツリーオープン当日|イマイマイズム見聞録[第5回] 今井舞「新潮45」12年7月号



「オープン」にいてもたってもいられない物見高い人というのは、いつの世にもどこの国にも一定数いるものである。しかし、日本人の「一番最初」好きは突出していると思う。海開きに山開き、出初め式なんて風習、他の国じゃああまり見ないもの。
 そんな日本人が、狂喜乱舞していたあの日、私はあの場所にいた。初物好きの魂が集ったあの聖地に。
 というワケで、今回は「東京スカイツリーオープン当日」。月日が経ち、「何だったんだろうあの騒ぎは」と冷静になれた今、改めて振り返ってみたいと思う。
 オープン当日の展望台チケットが入手困難と話題だったが、ホテルのブッフェつきプラン(8800円)が、10日前でも申し込めた。なんでだ。ザ・肩透かし。
 で迎えた当日。皆さんご存じだとは思うが、本当に、あの天候は酷かった。気温は初夏からいきなり冬。打ちつける風雨。容赦なく体温が奪われ、オープン30分前の朝9時半に現地に着くと、入場を待つ人々は行列しながら震えていた。その長さおよそ数百m。やはり悪天候のせいか、思ったより短め。最後尾につくと、少し早めにオープンしたようで前方が動き始め、10時前にはツリー麓の商業施設「東京ソラマチ」に入れてしまった。
 ソラマチは、ファッションビルと、デパ地下と、土産物屋がごった煮になったような施設だ。他のファッションビルと違い、外国人観光客を意識してか、何かこう「ジャパン」なテイストの物が散見される。本屋に「GEISHA」写真集とか置いてあったし。
 しかしこの日は、外国人客はほとんどおらず。代わりに多かったのは中高年層。50、60、喜んで。70代もチラホラ。そんな中高年の群れが、若者向けのファッションフロアを、店に入るでもなく、マグロのごとく回遊している。聞けば皆さん、「12時の展望台のオープンまで時間を持て余している」「若者向けの店ばかりで行くところがない」らしい。唯一ユニクロだけは入り慣れているようで、夏物が並ぶ店内に「寒いからフリース売って」と粘るオバサンの姿が散見された。

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