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円安「物価高」でもなぜ給料は上がらない?|「週刊新潮」3月21日号
 円安で顕著に値上がりしているのは石油製品。昨年11月末のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル145.5円だったが、2月末は156.2円。12週連続で値上がりが続いた。

 一方で、勤労者の給料はなかなか上がらない。

 ローソンやセブン&アイ・ホールディングスなど一部の流通企業が賃上げを発表。春闘の主役である大企業でもベアは希で、定期昇給や一時金増額にとどまる。賃下げが課題となっている企業もあるのが現実だ。

 双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏が語るには、

「ここ何年か円高が続いて国内生産を絞りました。円安になったと言って国内生産を元に戻し、給料を上げてやっていけるのか。本当に景気が好くなったという実感がないんですね」
 輸出企業は円安が増益に直結するはずである。

「円安になれば海外投資の所得収支も円ベースで増えます。しかし海外でもうけた金を、なぜ日本の従業員のために使うのか。政府の賃上げ要請に、経営者は釈然としない思いなのです」

 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏はこう言う。

「円安になって物価が上がっても、賃金はすぐには上がりません。賃金には、下落時に柔軟に動き、上昇時には硬直的な反応になる上方硬直性があるからです」

 かつて経済学の教科書には、賃金は上げ易いが、下げにくい「下方硬直性」が書かれていたものだが、

「日本経済が勝っていたころは、労働分配を増やしても、何とかやっていけるという自信がありました。いまは日本経済に負けグセがつき、給料を上げられなくなってしまったんですよ」

 家計はどこまで円安物価高に耐えられるのか。
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