食・暮らし

  • [著者]岡本仁(おかもと・ひとし/編集者)(ブログ:HERE TODAY 、),[イラストレーション]nakaban(HP:www.nakaban.com/、)
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たいやき ひいらぎ 岡本仁/私の好きなもの 暮しのヒント101





● 東京都渋谷区恵比寿1-4-1 恵比寿アーバンハウス1階
TEL:03-3473-7050
HP:

鯛焼きはひとつ137円。店頭販売のみです(予約可)。

私の好きなもの―暮しのヒント101―
岡尾美代子、高橋みどり、東野翠れん、福田里香、ほか
購入
 恵比寿のたこ公園脇にある「ひいらぎ」で鯛焼きを買った。はじめて食べたときは、妙に形が整っていて鯛焼きらしくないとまず思ったが、驚くべきは外見だけではなかった。一口齧ると、鯛焼きではない別の何かのような食感がある。豆大福の餅の部分を皮とは言わないように、鯛焼きの皮というのはあくまで便宜上「皮」と呼ばれているのであって、リンゴやソーセージの皮とは別種のものである。しかし「ひいらぎ」のはまさしく皮、極薄で、且つ中の柔らかいものを守る堅牢さを持っていた。クリスピーと言ったらいいだろうか。30分以上かけて焼いているらしい。しかもそのパリパリの皮の内側にもちっとした部分が程よく残っているし、ふたつ続けて食べても胃もたれしない軽めの餡がみっちり詰まっている。
 ところで自分は、鯛焼きは唇や舌を火傷しそうな熱々の状態で食べるのがベストだと信じて疑わない。ましてや「ひいらぎ」の場合、皮の焼き上げ方が何よりの特徴なのだから、時間をおけば自らが発する湯気でせっかくの皮が湿気ってしまい魅力は半減するだろう。なのにここは持ち帰り専門である。「ひいらぎ」からわが家まで徒歩15分、微妙な距離だ。そこで考えついたのがたこ公園で食べるというアイディア。この日もいつものように鯛焼きが二個入った袋をぶら下げ公園に向かう。しかし昼休みだったためベンチは満席。さっき、恵比寿駅のホームで立ったままおにぎりをパクつく若い女性を見かけ眉をひそめたばかりだけれど、他に方法がないのだから背に腹はかえられない。歩きながら、ままよと尻尾から食べはじめた。

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