「皮衣を着る」 聖イシドルスの聖遺物箱 レオン 1063年以前 サン・イシドーロ聖堂蔵
アダムとエバが禁断の果実にかぶりついた日。創造主がエデンの園にやってきたのは、陽が傾き、すずやかな風が吹きはじめた頃でした。日本語訳の聖書では「園の中を歩く」とそっけない表現ですが、ラテン語訳では「ぶらぶら散歩するように(deambulantis)」という語が使われているのが私は好きです。神さまも、夕涼みしながら庭を歩くのを楽しみにしていらしたのでしょう。ところが、いつもなら顔をみせるアダムたちの姿が見えません。呼ぶと、なにやら茂みの中から声がします。
「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」(「創世記」第3章10節)
羞恥心が芽生えたアダムとエバは、いちじくの葉をつづり合わせて腰を覆った後、神の叱責を恐れて茂みに隠れていたのです。