山と海の間の、ほんのわずかな平地に、民家がぎゅっと寄り集まっている。崎津天主堂は、その小さな集落のほぼ中央に、堂々と建っていた。
崎津にこの教会ができたのは1569年。以来、天草地域のキリスト教の中心地として栄えるも、禁教令が敷かれると、教会は取り壊された。弾圧の悲しい歴史を経て、1934年に再建された。
教会の近くにあるお土産物屋さんで、名物「杉ようかん」をいただく。餡を餅で包み、杉の葉で挟んだ菓子だ。
「このお店は、誰でんゆっくり過ごせるごとしとるんですよ」と店のおばちゃん。信徒さんの取り纏めも行っているという。
「教会の草取りや、庭の手入れ、掃除まで私ら信徒が、みんなやっとるんですよ。もちろん、日々のお祈りも欠かしません」
話を伺った後、改めて教会を眺めていると、庭の鯉に餌をあげている信徒さんの姿があった。この建物は、単なる宗教施設ではなく、人々の暮らしと地続きの、優しくて大きな家のように感じた。