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“快挙”を見ずに逝った「電脳将棋」パイオニア|「週刊新潮」6月13日号
 第2回将棋電王戦では、コンピュータソフトが3勝1敗1分とプロを圧倒――。

 この“電脳将棋”のパイオニア的存在だった森田和郎氏が、昨年7月27日に亡くなっていたことが明らかになった。享年57。

「ご遺族は公表しなかったのですが、今春、彼が代表を務めた会社関係者から亡くなったことを知り、3月にご遺族に会いました。亡くなってから時間が経っていたので、どういう形で記事にするか、検討していたのです」

 とは、雑誌『将棋世界』の編集者。3日発売の最新号で、森田氏の追悼座談会を掲載。これで死が公になった。

 森田氏は富山市出身。実家は開業医。東京工業大学を中退、埼玉医科大学へ。

 森田氏と親しい将棋棋士の武者野勝巳さんの話。

「コンピュータに夢中になり、オセロなどのゲームソフトを製作。ゲームソフトのコンテストで軒並み優勝していました」

 1985年に将棋ソフト「森田和郎の将棋」を発表。

「実力は10級くらいですが、定石通りに動くので、100万本以上売れた」

 その後もバージョンアップ版を次々と出した。91年には世界コンピュータ将棋選手権で優勝。

「『初段 森田将棋』は、3連勝すると将棋連盟から初段の認定を受けられた。年に1000人ほど初段認定し、将棋の裾野が広がった」

 将棋ソフトの基本的機能を構築した森田氏。その理論を隠さずオープンにしたため、後輩たちは次々と強豪ソフトを生み出していく。晩年は体調を崩し、自身のソフトもなかなか勝てなくなるが、改良に執念を燃やしていたという。今回の“快挙”を泉下ではどう見たことだろう。
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