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  • [著者]今井舞
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長渕剛の日本武道館ライブ|イマイマイズム見聞録[第10回] 今井舞「新潮45」12年12月号



 ライブ会場。それは、アーティストの「信者」が濃密に集う場所。率いるアーティストが濃ければ濃いほど、そこに従うファンも濃いはず。ということで、今回出かけたのは「長渕剛・TSUYOSHI NAGABUCHI ARENA TOUR 2012」。これ以上濃い場所もなかなかないだろうと、ひとりごちて当日を迎えた。
 会場となる日本武道館の最寄駅の九段下で降りると、まだ夕方4時前だというのに、ライブ客と見られる人々で混みだしている。一目見ただけで明らかに一般の勤め人とは異なる雰囲気が立ち上る長渕ファン。武道館に近づくにつれ、ファンの密度はさらに濃厚に。「ライブ前に会場近辺で行われる、ファンによる素人ライブは一見の価値あり」という前情報を得て、午後5時半の開場よりかなり早めに到着したのだが。あちらこちらでもう有志によるそれが始まっていた。
 いわゆる「そっくりさん」的な風貌の人、見た目ではなく歌声がそっくりな人、ただ好きで歌っている人、昔のフォーク時代の歌ばかり演っている人と、各々に「俺の長渕」を体現。単なる素人の路上ライブの範疇には収まりきらないほど、黒山の人だかりができている演者も。
 そして見物している長渕ファンの方も、髪型や服装、サングラスなど、完全に似せて行こうとしているミニミニそっくりさんがそこここに。あと、長渕のシンボルでもある「日の丸」と合口がいいせいか、男性は老若問わず和柄Tシャツ着用率が異様に高い。女性は、若い茶髪のギャルから、銀歯輝く中年のオバちゃんまでさまざま。一見バラバラに見える客層であるが、「田舎のスナックにいそうな人たち」というキーワードで括ると、ストンと合点がいく。
 だからか皆さん、すごく喫煙率が高い。この日は、ここ武道館のある千代田区が、路上喫煙禁止条例を導入して以来の路上喫煙率の高さだったと思う。ほぼ全員タバコ吸ってた。
 開場時刻になったので、まだまだ続くミニミニ長渕ライブを後にし、場内へ。何を隠そう、私は武道館に来たのは生まれて初めて。入っての第一印象は「思ったより狭っ」だった。中央には円形ステージが、観客から360度ぐるり見渡せる形で設えられているのだが、結構近くに感じられ、何だか地下格闘技のリングみたい。アリーナ席もステージから「直」な感じ。編集さんが取ってくれたチケットは「一階席」だったのだが、階上から見下ろす場所で、実質的には二階だった。この上にさらに二段、観客席が続く。
 18時半の開演に向け、どんどん客で埋め尽くされていく場内。撮影・飲食禁止と繰り返しアナウンスが入るのだが、皆お構いなしにパシャパシャ撮って、モグモグ食っている。ビール飲んでる人も多数。今のライブ会場ってこうなのか。それとも長渕ライブだけがこうなのか。ここ10年ライブなんか行ったことないのでよくわからん。そして開演直前、最後のアナウンスが終わると、客席のあらゆる場所から「ツヨシーッ!」という野太い男たちのコールが上がる。
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