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「田村正和」の殺陣で魅了した94歳脚本家「橋本忍」|「週刊新潮」2月21日号
 デビューはかの「羅生門」。脚本家の橋本忍氏は94歳にしていまだ現役だ。
 9日夜放送されたテレビ朝日の開局55周年記念ドラマ「上意討ち――拝領妻始末」は、1967年製作の同名映画の脚本を、橋本氏自らリメークしたものだった。
「前のは短時間で書いたため、脚本(ホン)自体が弱かった。いっか直したいと思っていました」
 と、ご本人。昨春、依頼を受け、1カ月で書き直した。「映画は三船プロの製作で、監督は『切腹』の小林正樹さんを私が紹介しました。ところが、小林さんは中抜き(撮影時間短縮のため、同じセットや俳優の出演場面をまとめて撮ること)を一切しない。主役で製作の三船敏郎君は、そこが気に入らない。私は2人の間でサンドイッチになって、弱りました」
 が、できた映画はキネマ旬報ベストテンで1位に入るなど、高く評価された。
 会津藩主の命で、その側室を息子の妻として与えられた藩士。意外や息子夫婦の仲は良く、娘にも恵まれるが、突如、側室を返せとの“上意”が下る。あまりの理不尽さに、藩士は主君へと立ち向かって行く――。
 三船に代わって、ドラマ版の主役は田村正和だった。
「現代劇では、お年を召したかな、と思うこともありますが、時代劇はいいですねえ。女房の尻に敷かれているのが、上意を受けて、エネルギーが満ちてくる。反乱の途中、息子夫婦が死んだときのアップの表情、目つきは、力の入ったお芝居でしたね。殺陣も上手です」(作家の麻生千晶さん)
 かつては眠狂四郎役で、流麗な殺陣を披露した田村だが、今回は怒りのこもった力強い太刀さばきだ。古希には見えない。橋本氏も、
「昔のスタッフの間では、三船君より田村さんの方がいいんじゃないかという意見もありました」
 最後には、友人でありながら脱藩を防ぐ立場の松平健との決闘もあり、見どころ沢山の2時間半。久々に時代劇らしい時代劇を見た。
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