食・暮らし

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高橋みどり/きちんと生きる ――「献立日記」を読み、つくる
沢村貞子の献立日記
高橋みどり、黒柳徹子、山田太一、笹本恒子、ほか
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はじめに

『わたしの献立日記』を初めて読んだのは、30代に入った頃だったでしょうか。初めはただ興味本位に眺めていたのに、どんどん引きこまれて、読み終えたときには、何だかじんわりと感動していたことを覚えています。
 今回はこの仕事のために、27年間36冊分に及ぶ「実物の」献立日記を一気に読ませていただく機会に恵まれました。愛する夫にいつもおいしく手料理を食べてもらいたいとの思いから始められた日記をじっくりと読んで、もっとも驚いたことは、日記の始まりから27年間を経ても、献立の内容に大きな変化がないことでした。もちろん味つけや量は変化したのでしょうが、品数はほとんど変わらないんですね。それで、「この記録と沢村さんの年齢を確認してみよう」と思い立ち、計算すると、日記がつけられた昭和41年から平成4年は、沢村さんが57歳から84歳のとき。私はそのことにとても驚き、そして勇気づけられました。このお歳にしてこの食欲、このエネルギー。けれども同時に、私は、それがすべて「愛する夫のため」だったと言い切るのは失礼なんじゃないか、という気もしたのです。そう感じた気持はいったい、どこから来たものなのか。そんなことを考えながら36冊を読みこんでゆきました。
 今回、献立日記の中から料理を選び、ページを構成するにあたって、私は、沢村さんの食卓を正確に再現しようと考えるのでなく、「私なりの沢村さん像」を追ってゆきました。テーブルは木でよく拭き込まれていて、うつわは銘々のものを使う。華美ではなく、持ちやすいほどの重さのうつわだろう、などと想像し、さも今晩の食卓作りのお手伝いをするような気持ちでしつらえました。文字で読んでいたときの色のない献立は、かたちにしてみると、思っていた以上の華やかさがあり、思わず箸が伸びるのがよくわかります。そんな沢村さんの心のこもった献立の数々を、みなさんも、堪能してみませんか。

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