山桜が咲き始めた。次々とそこら中の木々の枝から新芽が吹き出している。
まさに新しい、ぷりぷりの命がウチの周り中で吹き出しているので、そのエネルギーの固まりのような若葉色の気体が、辺りに満ち満ちているのが、目に見えるのである。
あんぐりと口を開けて、ずーっと見ている。そうすると、いつのまにか自分が消えてなくなってしまうのだ。こんな山の景色をぼんやり見ている、人間の「私」が、稀薄で、薄っぺらい存在だと気が付いてしまうのだった。気持ちいいくらいに。
でも。消えてなくなってしまっている場合ではなかった。赤木工房の食活(おいしい旬のものを食べるための活動)が、ずんずんと始まってしまったのだから。さあさあ。
みんなそわそわしている。今日こそは午後から、「たらの芽」を採りにいかなくてはならないのだ。
みんなウキウキしている。「こごみ」を探しにいきたいのだ。「ワラビ」だって、もっと採りたいし。「山うど」も、とっておきのあの場所に、採りにいかねばならない。