僕の家の定番ワインというのが、欲しいと思っていた。特別な日の、とっておきのワインではなく、いつもテーブルの上にあって、さまざまな味わいの規準になるような。しっかりと安定した味覚経験がスタンダードとして無ければ、人は奥深いワインの森に迷い込み、彷徨いつづけることになる。森間を辿る一本の細道があればこそ、高峰にある秘密の花園を味わうこともできるんじゃないかな。
我が家のハウスワイン、できることなら国産で。この夏、そんな夢がようやくかなった。北海道で展覧会があって、地元の人に勧められて買った。帰り道、札幌から金沢までのトワイライト・エクスプレスの中で、ピノ・ノワールとツヴァイゲルト・レーベ、赤二本を飲んだ。帰ってから、バッカスとケルナー、白いのをよく冷やして一箱分飲んだ。北海道三笠市にある一枚の畑でとれた葡萄だけを使って、小さな醸造所でごく少量造られているらしい。
「うーむ。よいではないか」