この日、宮廷教会には、少年の歌うアヴェ・マリアが響き渡った。聴衆が少年の声に心を震わせ、感動しているのが静かに伝わってくる。ヴィルテン少年合唱団のコンサート。聖歌隊として生まれた合唱団の歌声を教会で聴けるとは、贅沢な体験だと思う。しかもチケット代は6ユーロ。これに限らず、インスブルックでは、毎日どこかしらで気軽に聴けるコンサートやオペラの上演が行われている。
ハプスブルク帝国時代に発展した芸術分野は、音楽、美術、舞踊、建築など幅広い。帝国の遺産とも言える、洗練された宮廷文化に触れてみよう。
インスブルックが誇る宝、
ヴィルテン少年合唱団。
インスブルックに本拠を置くヴィルテン少年合唱団は、13世紀に設立された伝統ある合唱団。15世紀、この町を愛した神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世がこれを気に入り、ウィーンでも同じような少年聖歌隊を作るために、ヴィルテン少年合唱団のメンバーを連れていったという。世界的に有名なウィーン少年合唱団の母体だけに、その実力は申し分ない。この合唱団には変声期を迎えた少年や大人もメンバーとして加わっているのが特徴だ。市内で行われるコンサート情報は、旧市街にある観光案内所で入手できる。
街角に佇めば、
いつも音楽が聴こえる。
たとえコンサートに足を運ばなくとも、この町はいつも音楽であふれている。休日ともなれば、広場や通りにはストリートミュージシャンが現れ、楽しげな音色を聴かせてくれる。これがモーツァルトを演奏する超美青年だったりもするので、ついチップを弾んでしまう。
若者たちの出会いの場、
ダンスパーティを見学。
写真は、毎週金曜の夜にポーライダンス学校で行われている若者たちのダンスパーティの一場面。このダンス学校でレッスンを受けている生徒なら誰でも参加でき、若者たちにとっては出会いの場ともなっている。それにしても皆、ワルツ、マンボ、ルンバ、タンゴ、チャチャチャ……なんでも踊れて見事! このパーティの見学はできるが、見ているだけじゃやっぱりツマラナイ。ダンスレッスンを受けて踊りたくなること必至。なんと旅行者でも1回からレッスンが受けられる。
オペラやバレエを上演する、
チロル州立劇場。
1654年に建てられた宮廷オペラハウスを数度にわたって改築し、ここでさまざまな舞台芸術を上演しているチロル州立劇場。演劇、オペラ、バレエなどの公演が定期的に行われている。場所は町の中心部からすぐ。気軽にオペラが鑑賞できる、この環境がすばらしい。