圧倒的な自然にふれ、ふつふつと元気が湧いてくるのを、あらためて感じました。
アートイベントとしての成功例として語られることの多い越後妻有ですが、成功へ導いた“チカラ”がなんなのか、ちょっと分かった気がしました。
今回は、そんな越後妻有の“大地のチカラ”を中心にご紹介します。
内海昭子さんの「たくさんの失われた窓のために」(2006年作品)
4回目の芸術祭で、女子を中心に大ブレイクしました。この窓から切りとられた風景が、特別なものに変わっていく、自分だけの心の変化が感じられる作品。
実際ここからの眺めは、稲田のそよぎ、清流のせせらぎ、河岸段丘のなだらかな風景。そしてさわやかな風が、体を吹きぬけていきます。
動画も撮っていますので、ぜひ体感してみてください。山の稜線がまっすぐになっているめずらしい河岸段丘の景色にもご注目を。
行武治美さんの「再構築」(2006年作品)
越後妻有の唯一のリゾートホテルの敷地内にあります。すすきの原っぱにぽつんと建っていて、鏡に覆いつくされた小さな家が作品です。
外壁には周囲の風景が映りこみ、中に入れば摩訶不思議な世界が広がります。風で微妙に揺らぐ鏡。映っている自然と一緒に自分の立ち位置も揺れてしまうかのよう。
実は、この小屋には住人(?)がいます。作家の行武さんも“くろちゃん“と呼んでいる青大将。お掃除に行くと、脱皮した跡をちゃんと残しています。ほとんど姿は現わしませんが、もし見かけたら優しく見守ってあげましょう。
“くろちゃん”は、脱皮のたびに自分を再構築してるんだなあ、なんだかピッタリのところに作品があるものだなあ、なんて。
塩澤宏信さんの「イナゴハビタンボ」(2006年作品)
十日町から松代(まつだい)を結ぶ道路を車で走っていると、どうしても目に入るお蕎麦屋さんの看板があります。そのお店の奥の田んぼのなかに、巨大なイナゴが! こちらは陶でできた滑り台。稲田とイナゴ……。お米づくりでは共生しがたいこの関係をみつめているかのよう。
この地方では、田んぼはとても大切なもの。その中に作品をつくるということは、どれだけの信頼関係があってのことか……。それにしても稲田は美しいです。
お蕎麦屋さんの座敷からこの姿を眺めながら、「妻有そば」をいただけます。
越後妻有では、ぜひ、“山菜そば”を頼んでくださいね。季節季節の山菜、山の葉っぱなどが出てきます。春には「ホップの芽も食べました♪」と“こへび”の女の子が喜んでいました。今回、苧(からむし)の葉っぱも出ました!
トーマス・エラーさんの「人 自然に再び入る」(2000年作品)
お蕎麦屋さんのすぐ前の田んぼの中に、道に迷ったかのように人が立っています。その人は夏になると、ごらんのように蔦に絡まれ“自然”そのものになっていくのです。秋には紅葉した葉っぱをまとい、初秋になってやっと顔を見ることができます。この道を通るたびに、気になる存在です。
越後妻有をまわっていると、時折、こんな風景に出会います。
あまりにも微笑ましくて、とてもよく手入れをしてあって、思わす駆け寄ってしまった、なんだか心が膨らむような風景。古い石仏が集められています。