「電子書籍化で起業家を目指す!!」
男は自身のブログで、そう語っていたのだが、実際のところは、単なる“虚業家”に過ぎなかった――。
5月1日、長崎県警に逮捕されたのは、遠く離れた神奈川県で、書籍の電子化代行業を運営する藤野真(25)。容疑は、漫画を不正に電子データ化し、ホームページで販売したという、著作権法違反(譲渡権侵害)である。
県警担当記者によると、
「直接の逮捕容疑となったのは、1月22日の件です。東京都の男性に対して、人気漫画『銀魂(ぎんたま)』全45巻などを作者の許可もなしにDVDに複製し、1万円で売ったということです。なぜ、長崎の警察が逮捕したかというと、県警のサイバー犯罪対策室がネット上で藤野のサイトに目を止め、捜査を進めたからです」
問題のホームページ『50SCANNER』を見ると、あるわ、あるわ。『大人買い電子化サービス』と称するコーナーには、ズラリ、85タイトルが並んでいる。
本来、1冊410~420円するはずの『ワンピース』が、1巻から最新巻までの66冊揃って1万円など、激安価格で販売されている。
前出の記者が続ける。
「藤野はホームページで、個人からの持ち込みに限って電子化する“自炊代行業者”を謳っていますが、警察はウソであると睨んでいます。実際は代行を隠れ蓑に複製を作って売る、海賊版業者と同じ。2011年から営業を始め、余罪はこれだけでは済まないでしょう」
危なすぎる自炊業者
“自炊代行業者”について、少々、説明が必要だろう。
そもそも、「自炊」とは、生まれてから日が浅い言葉で、スマホやパソコンなどで自ら所有する書籍を読むために、本の背表紙を裁断し、頁ごとにスキャンして電子ファイル化することを指す。個人では労力を要するため、「自炊代行業」が登場。蔵書の保管場所に悩む人や、電子端末で読みたいというニーズに応じて、自炊業者は瞬く間に100社近くに上ったという。が、実は大きな問題が潜んでいた。
電子書籍に詳しいジャーナリストが解説する。
「個人が自分の本を“自炊”することは、著作権法の第30条で認められています。しかし、業者が料金を取って行うとなると、営利目的となり、話が変わってくる。さらに言えば、一度、電子コピーされたものが、ネット上に流れれば、無限に広まってしまう可能性も出てきます」
そうなれば、創作活動の根幹を揺るがす事態で、著作権者は、たまったものではない。
一昨年には、作家の浅田次郎氏、大沢在昌氏、林真理子氏、東野圭吾氏、漫画家の永井豪氏、弘兼憲史氏、漫画原作者の武論尊氏の7名が自炊業者2社に対して、スキャン行為の差止めを求める裁判を起こし、1社が認諾、もう1社は廃業した。翌年、さらに7社を訴え、そのうちの4社とは係争中だ。
「裁判で業者側は、個人の手足の代わりでしかなく、スキャン元の書籍も廃棄しているため、作家への実害はないと主張しています。しかし、逮捕者が出た今回の件から明らかなように、その気になれば、いくらでもコピーの拡散が可能なわけです。一度、データを入手したら、後はタダでお金を刷っているようなものです」(同)
これでは逮捕された男でなくとも、誰が誘惑に駆られないと言い切れよう。
他人のフンドシで相撲を取る自炊業者。そろそろ危険な“虚業”であると気付くべき頃合だ。
男は自身のブログで、そう語っていたのだが、実際のところは、単なる“虚業家”に過ぎなかった――。
5月1日、長崎県警に逮捕されたのは、遠く離れた神奈川県で、書籍の電子化代行業を運営する藤野真(25)。容疑は、漫画を不正に電子データ化し、ホームページで販売したという、著作権法違反(譲渡権侵害)である。
県警担当記者によると、
「直接の逮捕容疑となったのは、1月22日の件です。東京都の男性に対して、人気漫画『銀魂(ぎんたま)』全45巻などを作者の許可もなしにDVDに複製し、1万円で売ったということです。なぜ、長崎の警察が逮捕したかというと、県警のサイバー犯罪対策室がネット上で藤野のサイトに目を止め、捜査を進めたからです」
問題のホームページ『50SCANNER』を見ると、あるわ、あるわ。『大人買い電子化サービス』と称するコーナーには、ズラリ、85タイトルが並んでいる。
本来、1冊410~420円するはずの『ワンピース』が、1巻から最新巻までの66冊揃って1万円など、激安価格で販売されている。
前出の記者が続ける。
「藤野はホームページで、個人からの持ち込みに限って電子化する“自炊代行業者”を謳っていますが、警察はウソであると睨んでいます。実際は代行を隠れ蓑に複製を作って売る、海賊版業者と同じ。2011年から営業を始め、余罪はこれだけでは済まないでしょう」
危なすぎる自炊業者
“自炊代行業者”について、少々、説明が必要だろう。
そもそも、「自炊」とは、生まれてから日が浅い言葉で、スマホやパソコンなどで自ら所有する書籍を読むために、本の背表紙を裁断し、頁ごとにスキャンして電子ファイル化することを指す。個人では労力を要するため、「自炊代行業」が登場。蔵書の保管場所に悩む人や、電子端末で読みたいというニーズに応じて、自炊業者は瞬く間に100社近くに上ったという。が、実は大きな問題が潜んでいた。
電子書籍に詳しいジャーナリストが解説する。
「個人が自分の本を“自炊”することは、著作権法の第30条で認められています。しかし、業者が料金を取って行うとなると、営利目的となり、話が変わってくる。さらに言えば、一度、電子コピーされたものが、ネット上に流れれば、無限に広まってしまう可能性も出てきます」
そうなれば、創作活動の根幹を揺るがす事態で、著作権者は、たまったものではない。
一昨年には、作家の浅田次郎氏、大沢在昌氏、林真理子氏、東野圭吾氏、漫画家の永井豪氏、弘兼憲史氏、漫画原作者の武論尊氏の7名が自炊業者2社に対して、スキャン行為の差止めを求める裁判を起こし、1社が認諾、もう1社は廃業した。翌年、さらに7社を訴え、そのうちの4社とは係争中だ。
「裁判で業者側は、個人の手足の代わりでしかなく、スキャン元の書籍も廃棄しているため、作家への実害はないと主張しています。しかし、逮捕者が出た今回の件から明らかなように、その気になれば、いくらでもコピーの拡散が可能なわけです。一度、データを入手したら、後はタダでお金を刷っているようなものです」(同)
これでは逮捕された男でなくとも、誰が誘惑に駆られないと言い切れよう。
他人のフンドシで相撲を取る自炊業者。そろそろ危険な“虚業”であると気付くべき頃合だ。