食・暮らし

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失われた伝統|能登 ごはん便り 赤木明登+赤木智子


 正月早々、ばっちぃ話ですみません。

 手鼻をかんだことのある人、手鼻をかんでいるのを見たことがある人、いませんか? そもそも「手鼻」って何?というか、その言葉自体をご存じでない方も多いのでは……。でも、僕は知っています。子どものころ、ですから一九六〇年代でしょう、親に連れられて街を歩いていると、いたのです。すれ違いざまに「ふんっ!」、バスや電車を待っているときに「ふんっ!」と、手鼻をかんでいるおじさんが。そのたんびに僕は思ったのです。

「かっこいい~なぁ」そして「あんなふうに手鼻をかめる立派な大人になりたい!」と。

 そんなことをある日ふと思い出して、ちょっと練習してみました。すると意外に簡単にできるものなのです。鼻風邪などひいて、ズルズルしているときがチャンスです。鼻汁を鼻腔の中にとどめたまま小刻みに吸ったり押し戻したりします。けっして、吸いすぎたり出してしまったりしてはいけません。ちょうどいい頃合いの場所で、鼻汁を上下にピクピク動かすのです。鼻の穴のどのあたりがいちばんよいのか、鼻梁のちょっと下あたり、つまむと少し窪んでいるとこあたりなのですが、これは経験的につかむしかありません。適所で鼻汁を上下運動させていると、やがて粘液が粘膜からはがれて、丸まって、鼻汁がお団子状になってくるのがわかります。鼻腔内を鼻汁がコロコロと転がる感じになったときがチャンスです。反対側の鼻の穴を指で押さえて塞ぎ、肺から呼気を鼻腔に送り込み、一気に噴射します。その時に少しもためらってはいけません。もうひとつ、決して前屈みの姿勢で行ってはいけません。しっかりと前を向き、ちょっと顎をしゃくり上げたぐらいで、視線だけ前方の地面に落とします。練習は室内で、人の迷惑にならないように行いましょう。

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