すこしだけまわりが秋の空気にかわって、すこしだけ空の色もちがって来た頃。末娘がニコニコ顔で私に言う。
「あー。おかあさん。ドキドキするねえ。これからだんだんいい気持ちになるよねえ。」と、空を見上げているのか、山を見上げているのか。うっとり顔である。この娘は何しろ木の実好きであるから。ははーん。秋になって、大好きな栗やドングリがたくさん成るってことを言いたいのかな。でも、どうもそれだけではないらしい。
そしてもうひとり。朝起きて、まずは大きなテラスの窓を開け放す。するとダンナが私に言う。
「あー。キノコが出て来た匂いがする。そろそろ山に入らなくちゃなあ。」と、山に向かって、深呼吸している。
ふーん。そんな匂いがするのかなあ。私には、わからないけど。