「やっぱ夏ちゃ、鮑やがいね」。
というわけで、朝市のおばちゃんにお願いしておいた鮑が届いた。お任せなので、その日によって大きさもまばらで、掌にちょうど納まるくらいのは、固さも香りもよく、薄くスライス、肝を叩いて味噌と和えたタレに何枚も重ねて投入。コリコリと刺身でいただく。
片手に納まらぬ大物は、刺身にはやや固く、殻から身を外して、蒸籠に入れ、日本酒をぶっかけて20分ほど蒸す。蒸し上がったのをすぐに厚切りにすると、肉汁がしたたり、その汁から湯気が立ち上がる。そのまんま指につまんで、浜塩をちょいとして、熱々のを口に放り込むと、とろけるように柔らかく、口中にいっぱい唾液が溢れる。
一掴みにできるような小振りのは、いつもの鮑粥。肝をブツブツと切り分け、土鍋に胡麻油を熱々にして、よおく炒める。それから洗って水切りした米を加えてさらに炒めて、たっぷりと水を加え、薄切りにした身が縮れ、絡みついた米粒がとろけるまで煮る。浜塩で味を調えると、薄い緑色の粥ができあがる。上質な胡麻油、新鮮な鮑、揚浜塩田の能登塩、どれが欠けてもいけない。かつては、子どもたちがもう飽きたから止そうよと言い出すまで、夏中作ってた。