気がつくと、ロバが好きになってしまっていた。いつからだろうか。インドで(ロバが)荷物を背負って、みんなで並んでいるところを見てからだろうか。いつか、ロバを飼って、ロバを連れておつかいに行きたいと。五十歳になってしまった今でも。思ってしまうのだった。
結婚して、ダンナが話してくれたこと。
「そういえばさ。小さい頃に家の近所に『ロバのパン屋』が、何やら音楽を鳴らしながら、『揚げパン』を売りに来ていた。」って。
うー。すごくうらやましい。
「えー。ロバが荷車を引いてるの?」
「そう。でも、ロバのパン屋のパンを買ってはダメだって、叱られた。」
私と同い年のダンナは、岡山の生まれ。東京と岡山という距離は、今とは比べ物にならない程大きかったのだ。私が見たことも無い「脱脂粉乳」が小学校の給食に登場していたそうだから。
数年前に、輪島で漆の修業をしていたアイちゃんが、家族で故郷である沖縄に帰って行った。そしてすぐさまメールで、
「トモコさん。ロバのいるパン屋さんがこっちには、あるんですよ。ぜひ遊びに来てください。」と送って来た。なにー。