いまではすっかり、ゴハンはテーブルの上でいただくものになってしまったけれど。もともとそうじゃなかったことくらいは、誰でも知っている。僕が子どもだったころには、まだ畳の上に卓袱台を引っ張り出して、父親を中心に家族が輪になって座り、母親が盆に載せた器を運んできて、食事が始まった。卓袱台が流行り出す少し前までは、銘々の膳があたりまえだったらしい。実は、漆の器も、そういう時代に生まれて発達したもの。だから、和食器について本当のことを知ろうと思ったら、たまにお膳とお椀の食事に立ち返って、身体でその所作を知る必要がある。というわけで、畳の上へどうぞ。