


能登の東側は富山湾、西側は日本海、半島の海岸線をぐるりと回ると、沖に定置網が仕掛けられているのを各所で見ることができる。「大敷網」とは、魚の通り道になるところに垣網を張って、袋網の中に誘導する大きな仕掛け。これに雷に驚いた鰤がかかり始めるのと、雪の降りだすころが重なる。富山あたりでは、出世魚の寒鰤を年の瀬の贈答に使うらしいが、奥能登ではあまり聞いたことがない。この季節にスーパーの店先でも麹が売られるようになるのは、家庭で作るなれ寿しの一種「かぶら寿し」に使うため。塩漬けにした鰤と蕪とを挟み込んで麹漬けにすると、独特の酸味と旨味が醸し出され、冬の酒の肴として無類の逸品となる。毎年、自慢の「かぶら寿し」を頂戴し、その家庭にしかない味を堪能する。いまだ我家は、このなれ寿しに挑戦するほどの歴史を重ねていないが、いつか試してみたい。うちの畑には丸々と太った旨そうな蕪がもうできていて、脂ののった鰤がやってくるのを待っているのだ。雪の北陸には、白い「かぶら寿し」がよく似合う。